参考として・・・
前ページの 「彫刻と建築が、相乗効果で質の高い空間を作 った時代や地域があった」とは 古代ギリシア時代を指すものだ。
 代表的なのはなんと言ってもパルテノン神殿である。 百万回言われていることでも、教科書的であっても、良いものは良いので、ここでも繰り返すことにしよう。

 パルテノンに限らず、古代ギリシアの神殿や劇場、競技場の見事なのは、建築物の立地である。地形をうまく利用するというより、地形を建築に取り込んでいる。パルテノンはアクロポリスの丘にこそふさわしい。
 ギリシアの丘は、漢字の丘の字体に似ている。丘に上がるにはかなりの急勾配の坂道を登らねばねばならない。平地に屹立しているのだ。仰ぎ見る象徴的なところである。神殿を建てるのに絶好の場所であろう。
 この丘の上に、ゴミゴミした日常的な建築はいらないし、不必要に巨大な建築もいらない。丘の麓に取り巻くように設けられたアゴラや劇場、その他生活的な建築を従え、時代精神の象徴として、丘の上に君臨するように見守るように建てられたのだった。
 神殿建築は彫刻のように造られ、そこに設置された彫像達はより具体的にその精神を物語った。

破風の先の彫像から神殿、そして丘の麓にいたるまでひとつの大きな彫刻と呼べるだろう。
 彫刻と建築は不可分であり、それらとその立地環境とも不可分なのである。もちろん往時の思想、哲学、文化とも不可分なのは言うまでもない。それは「体系づけられている」とか「秩序の中に組み込まれている」といったことではない。始めに「思想ありき」でも「銭ありき」でもない。生活が、哲学が、神話が、信仰が、澄んだ空気が、まぶしすぎる太陽が、彫刻が、建築が相互に高め合った結果できあがった人類史に残る文化の「山」なのである。
 パルテノンの彫刻達は現在、大英博物館にある。本来不可分であるものを、何の縁もないところに展示してあっても、本来発揮すべき“意味”を表出することはできない。現在のギリシア政府が返還を望んでいるのだから、すぐにでも返還すべきである。彫像達は地中海の光の中で見つめられるべきであり、パルテノンのものはパルテノンに収められるべきである。陰の湿っているヨーロッパにはふさわしくないものだ。

 

 

 

 

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