パルテノンに限らず、古代ギリシアの神殿や劇場、競技場の見事なのは、建築物の立地である。地形をうまく利用するというより、地形を建築に取り込んでいる。パルテノンはアクロポリスの丘にこそふさわしい。
ギリシアの丘は、漢字の丘の字体に似ている。丘に上がるにはかなりの急勾配の坂道を登らねばねばならない。平地に屹立しているのだ。仰ぎ見る象徴的なところである。神殿を建てるのに絶好の場所であろう。
この丘の上に、ゴミゴミした日常的な建築はいらないし、不必要に巨大な建築もいらない。丘の麓に取り巻くように設けられたアゴラや劇場、その他生活的な建築を従え、時代精神の象徴として、丘の上に君臨するように見守るように建てられたのだった。
神殿建築は彫刻のように造られ、そこに設置された彫像達はより具体的にその精神を物語った。